悪い予感がするとわくわくしちゃうな

夕食を作りながら連続再生していたYouTubeから流れてきた
宇多田ヒカルの"This Is Love"。

彼女の歌の一節が引っかかった。
              
悪い予感がするとわくわくしちゃうな
痛めつけなくてもこの身はいつか滅びるものだから
甘えてなんぼ
            
関西出身の自分ではあるが、「甘えてなんぼ」にではない。
「悪い予感がするとわくわくしちゃうな」という感覚にである。
続くフレーズで「悪い予感」をより具体化させている。
この身が痛めつけられる様な「悪い予感」。
           
ここの歌詞は二律背反的。
悪い予感を伴う未来に対して挑戦的に向かうのか。
その運命を回避し、安楽な道を探るのか。
そう思って全体の歌詞を見返すと、
「不安と安らぎの冷たい言葉と暖かいベッドになるよ」
「冷たい言葉と暖かいキスあげるよ」
などという相反した感覚の入り混じった言葉が散りばめられている。
これらは分かりやすい。
それを一歩進めたのがこのフレーズなんだろうな。
          
ただ、自分には「甘えてなんぼ」の感覚はない。
不器用だから安楽な道に運命を回避できない。
「滅びる」のが早まったとしても、
毛を逆立てるような運命の風の中でも立っていたいと思う。
その予兆を感じた最初のほんの一瞬に
フッと心によぎる恐怖と勇気とでも呼べる感覚。
自虐的かもしれないが、この感覚を亡くしたくはない。

この曲に限っていえば「愛情には相反する2つの感情が混在している」という
よく言われることを表現しているだけなのだが、
彼女の場合はありきたりの言葉で留めていない。
本当に匠の技としか言いようがない。
脱帽。