日本の科学研究

帰国して、日本では研究がやりにくいな、とつくづく思う。
その一つが隣との垣根。
 
海外の研究室はオープンスペースが多く、
違う研究室でもドアがなく人の行き来ができる。
もちろん、カードがないと建物に入れなかったり、鍵のかかるドアのある部屋もある。
 
だから違う研究室の人と研究の話などもしやすいし、物の貸し借りもしやすい。
「○○の試薬を少し分けてもらえませんか」とか、
「○○の機械を貸してもらえませんか」などのメールが
研究所、施設全体にまわす事ができる。
自分も何度もその恩恵にあずかってきた。
 
ある実験を試したいな、と思った時に、莫大な費用を使わずにトライできる。
これは科学者としての精神衛生上、非常に有意義なことだ。
物の貸し借りから、ノウハウをやり取りする事もできるし、また人的交流も増える。
 
日本では、隣との垣根が高い。
物の貸し借りもやりにくい。
実際、自分を含む多くの研究室でデッドストックになっている試薬、機器が何と多い事か。
本当に無駄。
「この数年使っているのを見た事がないけど、他所の研究室の人には使わせない。」
「使ってもいいけど、論文発表の時には名前を入れるのが条件。」
そんな言葉を何度か聞いた。
 
確かに日本の研究所や大学では共同研究設備の部分もある。
ただ予算も多くなく、古い機械を長年使っている事も多いし、
管理が不十分なところも多い。
共通機械使用のルールが守られない事も多い。
 
横のつながりが広い研究が必要になる将来を思い、
このようなやり方を続けていていいのか、と危惧する現在…。