スイス大会 2011 (1)

怒濤の一週間の終わりにスイス大会。
朝、F先生、O先生を迎えにホテルに向かう。
昨日、遅刻して大恥をかいたし、
チェックアウトなども手伝わないといけないから予定よりも20分早目に。
昨晩、先生方と飲むことになったのは予定外で、かなりしんどかったのは事実…。
着いて、カフェを頼んでいたところを朝食を終えたO先生に見つかり、
今日の予定の資料などを見ながら暫し歓談。
  
7時45分に道場につくと大抵の人が来ていた。
予定では先生方の防具はバスの方に積むハズだったが全然無理だったので、
僕の車に載っけたままでBernに向かうことになる。
バスに乗れない人まで出てしまい、その人は電車で…。
 
Bernへの道すがら、剣道やスイスの生活などについていろいろ話す。
「日本からの先生が昇段審査を見るのは海外の剣道連盟の人が嫌がるから、 
行かない方がいいんだよ」
とF先生が仰るが、仲間が講評を聞きたがっているのを知っていたので、
ちょっとプッシュしたところ、
「じゃあ、こっそりと見に行くか」という事になる。
実際、審査に間に合うようにLausanneを朝早く出たのはそのためだったし。
  
ホテルへのチェックイン、先生方の着替えを終え、会場へ向かう。
こっそり、と言っていたが、結局は会場内の端の方からしっかり見た。
初段の審査でず〜っと単調な合気での打ちが続いていて面白くないなぁ、と思って見ていたが、
そこでGPが擦り上げ面、そして引き続いて相手の居着いたところを面を打ったのは
インパクトがあった。
「彼がもし今まで何本も打たれていても、これで全て帳消しになったよね」とO先生。
それはよく分かった。
結局、うちの道場からは新たに3人の初段、1人の2段が誕生。
合格した初段の3人は同じレベルでいつも一緒に真面目に稽古している仲のいい人達で、
本当に嬉しかった。
4段で2人、3段で1人、初段で1人が落ちたのは残念。
 
さて昼から開会式を終え、チーム戦が開始。
ウォームアップの時に左足底の皮膚が完全に切れて出血し、道場が血だらけに。
実際、そこだけではなく数カ所が割れていて、左足を着けられない位痛いのがここ数日。
テーピングして出血を止め、荷重がかからないようにすることしかできない。
   
Lausanneからは4チーム出るが、面子は当日の登録直前まで決まらなかった。
当初の案では僕はLausanne3と言われており、自分では中堅かな、と思っていた。
でも最終案ではLausanne2。ここなら絶対次鋒やな、と思った。
人数の関係もあり、Lausanne1とLausanne2が6人ずつで、
試合によって面子、オーダーを変えることになる。
結局、自分は初戦では先鋒。勝てば、次の試合ではSKと入れ替わって休み。
この前のKasahara Cupの中堅に続いて、ちょっと荷が重い。
あとの5人は2段〜4段で、自分が一番下だから。
先鋒の役割として、元気よく勝ってムードをつくらないといけない。
初戦はOlten。
先鋒の人は3段。次鋒は1級の審査を一緒に受けた人。そこまでは把握。
そうだよなぁ、僕のレベルなら次鋒のレベルだよなぁ、そう思う。
うちの次鋒は3段のKF。
まぁ、やるしか無い。あっ、O先生が審判か…。
  
挨拶後、礼をして構える。「始め!」。
剣先で探りを入れる。固いかなぁ。あと、あまり動きは速くなさそう。
軽く剣先で抑え気味にしたら空いた。
よっしゃー、篭手もらいっ!
初太刀で篭手。3本旗が上がる。
「2本目!」
相手が焦り始めたのが分かる。力任せに押してくるし、くっ付いてもくる。
嫌やなぁ。ちょっと離して面に。あっ、短いか。
「Pas mal」そんな声が場外から聞こえる。
で、次いで今度は居着いたところを距離を図って面。
「面あり、勝負あり!」
おっしゃー、2本勝ちした!
「早かったねぇ。いい試合やったよ」そうSKに声をかけられた。
トータル1分程だったようだ。
先鋒の役割は果たしたぞ〜 あとは頑張って!、そんな気持ちで試合を見る。
結局4勝1分で勝利。 
試合したOltenの人と「有難う」と握手をして別れる。
応援してくれているLausanneの人達から
「いい試合やったね」とか、
「yasuはkilling machineやな。
『ハイ、篭手』、『ハイ、面』、『ハイ、一丁上がり!』って感じ」、とか茶化される。
  
次のBasel1との試合では2段のSKと先鋒を入れ替わる。
6人で並ぶが、試合場に入って挨拶をするのは正式の5名だけ。
相手の先鋒は審査で3段を取ったばかりのOC。
こう着状態が結構続いた後OCが先に1本取り、SKが1本取り返す。
時間切れ寸前にOCがもう1本取り、SKが破れる。
戻ってきて「引き分けで何とかするんやった」と悔やむSK。
次鋒ではKFが苦しみながら2本勝ち。1本取られたのは意外。
中堅ではMWが二刀のFを相手に戦う。1本面を決めて勝利。
副将は番狂わせ。レベル差があるのにも関わらず引き分けてしまう。
大将ではAPSがMS相手に戦う。小柄な女性と熊男との対決。
彼女の好きな返し胴が入ったか、と思ったが、有効とされず、結局は面を取られて1本負け。
勝数、本数ともに引き分けてしまい、代表の1本勝負。
MWとMSの戦い。両方とも大きい。
でも若いMSが得意の引き面で1本勝ち。
ベスト4に進めなかった…。
悔しかったけど、仕方ない。
  
防具を外して、観戦に回る。
その時、試合したOltenの人が再度やって来る。
英語があまり達者ではなさそうだったが、
「本当に綺麗な剣道をしてますね。そして速い。
あなたと試合できて本当に嬉しかった」
そう言ってこられた。
なんかジーンとした。
一度挨拶が終わっているのに、わざわざ探して言葉をかけに来てくれたのは有り難いこと。
自分は道場の稽古ではスピードもテクニックも何にも無くて、
いつもどうしたらいいのか分かんなくて、四苦八苦している。
言葉のこともあるから、いろんなことで暗中模索している。
だから自分の剣道が正しい道をたどっているのか、いつも不安で仕方がない。
これは素直な気持ち。
でもちょっとは上達してんのかなぁ、とは思ってもいいのかなぁ、とも思った。
  
観戦に回ろうと思ったら、審判長席のF先生が呼んでられる、と大会関係者の人がやって来る。
「これからスイス大使館の公使の方が来られるから、ここに居て」
公使と次官?の2名の方が来られたが、日本人の方ばかりだったので、
通訳も要らないだろうと思い退席しようとしたが、
スイス剣道連盟の会長から「次官の方に解説してくれる?」と頼まれ、
その場にとどまることになった。
まともな解説なんてできない。
「高校の体育で剣道をやったことがあります」という次官の方の言葉だったので、
試合のことと2年間のスイスでの稽古を通じて得た各個人の背景等を加えて解説した。
ど真ん中の審判長席から集中して試合を見れたのはよかった。
でも緊張と、長時間の中腰はちょっと疲れた。
  
LausanneはLausanne1が決勝戦でZürich1に破れて準優勝であった。
なかなかZürichを倒せない。
彼らは6段2名、4段2名、2段1名のチームで、
そのうち4名は女性、チャレンジャー、オープンの優勝経験者
(1名はヨーロッパチャンピオンでもある)。
でも、来年こそは絶対にLausanneが優勝!!!
   
後でO先生から「いい篭手だったね」と言ってもらったし、
見てないと思っていたF先生からも同じコメントをもらった。
「あの初太刀が大切なんだよ。いいところを打ったね」と。
「Lausanneの人の試合は殆ど見たよ」と仰った。
  
全試合終了後、オリヴィエがF先生に呼ばれ、公使と彼らの会話に立ち会う。
公使はオリヴィエとドイツ語で喋る。
これをF先生に通訳しないといけない。
英語にしてくれたら完全に分かるのに…、と思ったが、
比較的簡易なドイツ語で、内容もバレースクールでの剣道について限定した話だったので、
ほぼ分かった。
同時通訳にはならなかったものの、コンセプトはF先生にお伝えできたと思う。
  
いろんなことがあって疲れた。
Sayonara partyがあったが、ビール1本飲んだところで眠くなってしまった。
併設されているprotection civilにいくと、今度は本当のシェルターだった。
本当にゴツい扉。開けると3段ベッドが並んだ部屋が幾つかあった。
3段ベッドの1番下で寝袋に入って眠った。