Bern Cup

ベルン・カップという大会に出場した。
去年剣道の試合を初めてした大会。
Openは初段とそれ以下の人を対象とし、女性は級・段関係なし。
去年はプール戦から出れなかったので、今年はプール戦から出てトーナメントに出るのが目標。
   
56名の参加者。
自分はプールK。1人欠席したため、3人中2人がトーナメントに出れる。
3位にならなけりゃプールから出れる。ラッキー!と思う。
1人目はジュネーブのLD。この前のジュネーブへの地稽古出稽古で一度当たったことがある。
身長差を利用して1本面を取ったもののその後苦しみ、時間一杯まで戦う。
次はこの前のセミナーで見たことがあるバーゼルの人。
戦ったことはなかったので、情報なし。
どうしようかなぁと思いつつ、篭手と面で2本勝ち。
これでプールを1位で抜けた。
目標達成。。。
   
トーナメントはランチ後、とのことだったが、プール戦が早く終わったので、
1回戦だけ行うことになる。
相手はプールOの2位の人。
また身長差がある。2本の面をすんなり取って勝利。
これでようやくベスト16。
ここでランチブレイク。
  
昼食を摂りながら、仲のいい6段のK先生と話す。
開口一番、「左手がダメねぇ。だから残心が弱いのよ」、とダメ出しされる。
そういや、K先生が審判をしていたんだった。
このダメ出しで思いっきり凹んだ。
Openの続きは女性の試合の準決勝戦後からスタートするので少し時間があった。
次の相手は日本でずっと剣道をしていた日系人KTで、一番の優勝候補。
彼の試合は自分の一つ前にあったため見ていたが、長身から綺麗な面を打つなぁ、と感心していた。
自分の負けだな、と思った。
ただ、ランチ後に雑談をしていたベルン在住の"Silver fox(銀狐)"の異名を持つ日本人が、「足を使うんやで!」とアドバイスをくれた。
うーん、そう言われても、こっちも足底が切れまくっていて動けんのよ、と思いながらも、6段の先生の言でもあり、有り難く頂戴する。
   
昼からのOpenの始まりは自分とKTの試合から。
自分よりも背が高い。でも動きが少ないかな、と思う。
攻めても手元はなかなか上がらない。
面を打ってくる。なんか、外で見ていた時よりも遅い感じがする。
ただ威圧感があるので面に行きにくい。
篭手に逃げるが見透かされている。
抜き胴を行うがダメ。
最終的に出端篭手を見舞う。
入ったと思った。直後に「止め!」の声があったから。
でも次の言葉は無情にも「延長!」。
エーッ!入ったやん、と思うがしようがない。気を取り直して試合続行。
ふと気を許したところに面が来た。無意識に返し胴をしていた。
「胴あり!」の声。
観衆がざわめいたのが分かった。
勝っちゃった…。
   
次はルツェルンのR。彼とは4月にバーゼルでの団体戦の中堅で当たったことがあるが、その時には勝った。ただ、個人戦では3位になってたはず。
そんなことを考えながら臨む。
まず出端篭手を取られた。自分の好きな技で決められたので、かなりショック。
でも結構、気は落ち着いていた。
剣先が曲がったまま面を打とうとしてくるのが見える。それに速くない。
じゃあ、と思い出端面を打つ。これで1-1。
ここで師匠から以前に言われたことを思い出す。
「1本取り返されたら相手はメッチャ怒ってくるから、気ぃつけぇよ。」
本当にそうだった。どんどん近間から打ってくる。
間合いを外そうとしても全然理解されない。
仕方ない。KFとの地稽古でよくやられることを自分がすることになる。
近間からの面。
自分はやったことがないけど、タイミングとかはこれで良かったはず、と思う。
相手の剣先が死んだまま中途半端に近間にいた所で、面を打込み斜に下がる。
「面あり!」の声を聞き、ホッとした。
これでベスト4。
   
セミ・ファイナルはルツェルンのEKと。
彼がジュネーブのYPに勝ってベスト4に来るのは意外だった。
2段直前のYPは若くて速いから、YPの勝利を確信していた。
面をつけ直している間にEKが2本勝ちしたことを知り驚く。
EKは初めての相手。
Rとは違って落ち着いているな、と思う。
なかなかお互いに決まらない。
でも先に出端篭手を取ったのはEK。
1本取らなきゃ。時間が気になる。そんなことを思いながら焦り出す自分。
相手が手を挙げ、竹刀の弦の歪みを審判に申告。直後に笛が鳴る。
あれっ?もう時間?ヤバいなぁ。
これで自分が動揺した。
後で仲間から、これまでの試合運びとは全然変わった、と言われた。
打ちの頻度が上がった。自分からの攻撃が明らかに増えた。無駄打ちが。
暫くして笛が鳴る。
軍配は相手に上がった。
仲間の落胆の声が聞こえた。
   
結局EKが優勝し、自分は3位に。
予想していなかった結果に驚いた。
  
その後は各道場の先生方や剣道家からお祝いの言葉やコメントを貰った。
何人の人とビズしたり握手したりしたろう。
審判をしていた何人かの先生からは耳の痛いことも言われた。
「セミ・ファイナルでは、2-3本いい篭手が入っていた。
でもな、気合が足りんかったから挙げなかった。
もったいなかったよ。」
同じことを別々に2人の先生から言われた。
  
スイス剣道連盟理事長の先生からは
「KTを下したのは面白かったね。あの返し胴はよかったよ。
他の時のは遅くて2段打ちのようになってたから、
1本にならなかったけどね。」
Silver FoxことD先生からは
「楽しませてもらったよ。特にKTとの試合!」
ランチでダメ出しを食らわせられたKNは
「本当におめでとう。1年で本当に変わったわね。
今日の試合で君の入身が一番上手かった。」
入身???自分ではあまり意識をしていなかったが、
普段の地稽古なんかで自殺行為をするな!と言われ、
間合いや剣先を試したりしているのが出たのだろうな。
他道場の剣道家からもらった言葉で一番嬉しかったのは
「私はあなたの剣道が好き。真っ直ぐで小ざかしいことをしないから。」
これも2人の人から聞いたなぁ。
  
でも、本当に一番に伝えたかったのは師匠。
師匠はバレースクールの今期最後の稽古のため欠席。
SMSで結果を送ると、そっけない「おめでとう」の言葉。
明日、ちゃんと会って話さなきゃ。