BLKC 122回目

OCから調子が悪い、との連絡があり、一人で道場へ向かう。
とても寒い。周りは本当のにび色…。
車の中で心を剣道モードにシフト。
道場周辺でどうも仲間の車とかち合った様で、3台が同方向に向かう。
NP、NCの車であった。
NCは子供が生まれて4ヶ月半ぶりに剣道を再開した。
この前にちょっと道場を訪れており、僕の手の怪我を心配してくれた。
「実はここ2,3日、調子が悪いんで、明日手の専門の病院に行こうと思っているんよ」と説明。
そう、剣道で悪化しているとは思わないのだが、手を使う仕事ゆえの問題だと思う。

形の準備をしているとオリヴィエが来て「週末は稽古はないぞ。yasuがやってくれへんから」
と言ってくる。
「俺は指導はでけんよ、やっぱり。」
「でも、お前はセキュリティーを充分に考え、
どのように稽古をオーガナイズしたらいいか、それは分かるやろ。
デモ用の稽古、素振り、切り返し、基本打ち、掛かり稽古。そういったことはできるはずや。
俺が指導を始めたのは初段の時やから、そろそろお前もやることを考えんとアカン。」
そう、バレースクールの稽古の指導者の代わりがいなくて、週末の稽古がなくなったのだ。
オリヴィエがいるから出稽古に行っているのだが…。
「分かった、次はやることにする。」と答えた。
1週間前に打診され拒否した後、実は剣道の本を再度真面目に読むようになったのは確か。
技術論、そして精神論のもの。
オリヴィエに教えてもらったのは技術論ばかりではないからだ。
剣道という、相対した人とどのように繋がりを持つか。
勝ち負けだけではなく、相手をリスペクトし、自分をどのように出していくか。
伝えるべきことは山ほどある。
それに自分が参画させてもらえる可能性があるのは有難いことだが、責任も重大。
         
稽古は形から。
EGSに相手して欲しいと思うが、NPが2段に再度挑戦する予定で稽古したがっているので、遠慮。
JDと行う。
太刀の形7本目までを行うが、2人とも6,7本目がまだまだ。
6本目は仕太刀ばかりやっていたので、打太刀は経験不足。
左上段を間違えていた、というとてつもないミスが発覚。
それ以外はシークエンスとしては悪くなかったはず。
"menacer"などの心持ちを刀にきちんと反映させるのが不充分。
あとで、見ていたACから、仕太刀の刷り上げ籠手の際の足運びについて指導いただいた。
7本目。
前回よりは明らかに良くなる。YouTubeを何度も見ていたせいもあろう。
打太刀の抜き胴の後で立膝をした際に、以前と同じ間違いをする。
隣のNPの指導をしていたオリヴィエが
「yasu、足で〜す。ダンサーか、お前は!」と笑いながら突っ込んでくる。
自分でもしまった、と思っていた。
不完全ではあろうが、6,7本目が少しずつ形になってきたのは嬉しい。
稽古参加人数は多かったのに、形の稽古をしていたのは3組程度。
何でなんだろう?勿体ないなぁ。
    
今日の稽古はいつもと違ったことが多かった。
切り返し、基本打ちの稽古の後、技の稽古は引き技のみ。
元立ちがしっかり受けてくれないと引き技にならないが、
女性とやる時には、もちろん力加減を少々考えるようにする。
この数回の稽古で引き技が変わってきた。
まだ引き篭手はなかなか成功しないが引き面とその後の残心については大きく変わったと思う。
   
次いで、掛稽古。僕は4段のAC、3段のKF、無級のSeとの組。
ACとの時に少し開いた胴を見逃して面に挑んでしまう。
そしてちょっと居着く。そこをACに竹刀で頭を小突かれる。
失礼した。
それ以外はスムーズ。体当たり、鍔迫り合い、引き面はちょっと不完全。
   
この後は地稽古に突入。
いつもより長いが、有段者が元立ちになるので、掛れたのは2回だけ。
その後、周り稽古になって3、4本行う。
有段者への地稽古はオリヴィエとACに。
オリヴィエとの地稽古では、
何とか相手の空いている所を探す、もしくは空けさせることを心がける。
これが今の課題。
初太刀はオリヴィエの気が抜けたか、と思った時に攻め入って面に挑み、
面はいい感じに入ったと思ったが、きちんと胴突きに遭っていた。
ここでオリヴィエの目がニタッ、と笑った。
足さばきを前後左右にし、剣先でもいろいろ細工をしながらも果敢に攻めた。
気は全く抜けなかった。自分でもよく攻めたと思う。
最後に篭手抜き面を入れたと思ったが、オリヴィエはさらに面抜き面を打ってきた。
何分やったか分からないが、最後まで気の入ったいい稽古だったと思う。
ACとはちょっと違った地稽古。
攻めをもっとしっかり教えようとしたという。
攻められた時にビビるのが見えたらしい。
顔を少し動かすだけで剣先が反応するが、相手がしっかり攻めている時に反応しないとか、
そういったことがあったらしい。
あとは相手の剣を殺すことをもう少ししないといけないということ。
まだ不十分。
その後はMKF。全く打たれず、先の先の攻撃で数本。
JD。篭手胴などを試す。
NM。彼には手こずる。以前から上手いと思っているし、大きいし力も強い。
空いている所が少ない。ただ自分からあまり攻めてこない。
返し技が多い。自分が攻めないと、お互いに待ち剣になりがち。
跳び込みの面は1本は決まったが、他はきちんとブロックされた。
抜き胴を浴びたりもしたが、気では負けたような気がする。
   
稽古後、オリヴィエが「yasu、今日は本当にいいcombatだった。
お前が最後まで攻めて来ているのがよく分かったし、
途中で自分をジャッジして気が落ちたりすることもなかった。
だから本当にいいfightになったよ。」
「いろいろ試したんだけど、なかなか上手くいかなかったよ、でも」
「そうやな、いろいろやってたな。後は練習やな」
そう、彼は今日の地稽古のことを"combat"と言ったのだ。
フラ語で、「試合」。いつもなら"ji-geiko"と言う。
途中で英語に切り替えたのだが、そこでも"fight"と言った。
それに気づいた時に妙に嬉しくなった。
「格下の者との地稽古の時では『指導稽古』を心がける」と言っているが、
今回は「試合」のように思って対峙してくれていたのだ、と思ったから。
思い過ごしかもしれない。
でも思い返せば、彼も抜き胴を打った後にすり抜けてきちんと残心を示したり、
普段の地稽古よりも多く動いていた。
   
同じようなことは、今日は見学だけに訪れ、週末にはZürichに引っ越してしまうSLからも言われた。
「yasu、今日は本当によかったぜ。姿勢も崩れず、最後までよく攻めてた。
如何せん、まだ左手が甘いけどな、何度も言うように…。でもいい試合やったよ」、と。
 
ここ1,2週間で何かが変わった。
何かは分からない。でも何か一つ突き抜けたような感じ。
稽古中に、全く気が抜けなくなったのも1つの現れだが、それ以上に何かが違う。
このまま続けたいなぁ、と思う。