Bern Cup

Bern Cupに参加した。初めての剣道の試合。
エントリーしたのは個人戦の部。対象は初段以下の者のみ。
無級の僕はエントリー対象外なのだが、師匠の許可があって例外的に対象となる(登録の時のファイルには3級、となっていた)。
40名が8グループに分かれて総当たり戦。各グループの上位2名が決勝トーナメント戦に行く。
僕はG組。
F組が終わり、G組の初戦に当たっていた僕は赤のタスキをつけて待ってたら、
「次は1時間のランチの後」という非情な声。緊張がプツッと途切れた。
仕出しの弁当もあったが、持っていったおにぎりを食べながら午前の試合を話す。
女子の部でMFKが上位2位までに入り、午後の最後に決勝戦をすることが決定。みんなで励ます。
男子の部は午前の4組のうち3組でLausanneの面子が決勝に進むことが決まる。3人とも初段。
RBは上段で戦いF組1位となったが、左腕の負傷で決勝戦は棄権することとなる。残念だが仕方ない。

自分の試合のために先に試合場に戻り、準備。緊張してきたーっ。
黙想をしてちょっと楽になった。
1人目は面、面、2人目は篭手で負かしたが、3人目で掴まる。
仲間から「乱暴に打たれるから気をつけろ」と言われていたが、確かにそれは感じた。
でもしっかりと打ってくる。残念ながら面、篭手の2本負け。
4人目は3人目と連続。篭手を決められ、2勝2敗の危険に陥る。何とか面をお返しして、引き分けに持ち込む。
3人が2勝1敗1分だったが、勝ち点で1点及ばず決勝トーナメントには進めなかった。
時折、仲間が声をかけてくれていたのが耳に入ったが、本当にサポートになった。
弱気が消えて、前に出る力になった。有難かった。
皆のためにも決勝トーナメントに行きたかったなぁ。

決勝トーナメントも終わり、最後の最後。
審判をしていただいた3段以上の先生方を含めて全体(36名)での勝ち抜き紅白戦となった。
皆の竹刀を試合場に集め、7段の先生が2つに分ける。僕は白組。
後で思ったのだが、紅組に審判をした先生が多く入っており、かなりアンバランスな構成だった。
紅組はきちんとレベル順で並んだが、白組は策なくバラバラ。無級の僕は最後から4番目となる。
白の最初の2人が強く、紅組の12人程を片付けていく。
その後、紅組のKF(3段;Lausanne)が圧倒的に強く白を次々に潰していく。全然レベルが違う。
彼を止めたのが僕の右隣のAarauの有段者。引き分けにまで持ち込む。
引き分けは両者とも試合終了になるので僕の番が回ってきた。向こうは後3人。
全員3段以上でスイスチーム経験者もいるとのこと。
負けて当然。できるだけのことをやるだけ。
そう思った瞬間にストン、と肩の力が抜けた。
気合いは充分。物理的ではなく、精神的に背中に壁ができた感じ。引かない、という感じになった。
相手の動きに集中でき、気が抜けることはなかった。
一人目はLausanneのRP。日本にも留学していたこともあり、よく話す仲間。でも今は敵。
個人戦の審判をしてくれ、「出だしがいつも弱い」と彼に言われたので、開始早々気合いを入れて攻める。
後で聞くと「いつもと違って大きなオーラのyasuが見えた」そう。
最終的に引き面で1本勝ち。
次はAarauの先生。両腕に和彫りの刺青がありおっかない。身長は低いがどっしりとしている。
攻めてこず、お互いに探り合い。しびれを切らすのはやはり僕。イラチ。
何度かうち合い、出端小手を狙うがハズれ、実際には普通の篭手で1本。
3人目は大将。チューリッヒでのZüri-Cupの時に練習をオーガナイズしていた先生。
上背はないが横幅が広い。軍人か警察か、そういった仕事をしているような感じ。
彼との時は殆ど覚えていない。興奮していたせいもあるんだろう。
抜き面か、単なる面か、いずれにせよ面で1本勝ちとなる。
えっ、勝っちまった。まぐれや!でも後3人を残して白組の勝利!
皆びっくり。紅組にいたLausanneの面子からも「yasu、見事!」とかの声があり、胸が一杯になった。
ちょっと足がガクガクしながらもきちんと礼をして、戻ったら白組の皆から祝福のハイタッチ、どつき(笑)。
「よかったぞー!」。でも閉会後の挨拶でお相手いただいた先生方からも「よかったよ。また試合しよな」
って言ってもらえたのが本当に有難かった。
あと防具を片付けロッカーに向かう途中、Genèveの女の子 Au に声をかけられた。紅組の先鋒をとっていた子。
「あなたの剣道、本当によかった。私も見習いたい。」と。
「俺なんかを見習ってどないすんねん。」と返すが、
「気合を出して引かない態度、中心をとっているとこを見習いたい」と。技やないんね、それはよかった。
「有難う。でも3週間前に一度稽古一緒にしたこと覚えてる?」
「うん、勿論。」
「じゃあ7月、また絶対に出稽古に行くから、その時に地稽古しよな」と言って別れた。
わざわざ声をかけて来てくれたのは嬉しかったなぁ。
あと、7段の先生から「頭では動こうとしているんだけど、身体が動けない、というのが見てとれたね」と声をかけていただいた。そうっかー、動けてないのがバレバレやったんやね。
できる技があまりないのが1つの理由。
それとやっぱりリバ剣であること、歳を取ってることが考えられる理由かなぁ。
これは練習、稽古で獲得できるようになるんだろうか。
先生はベルンで教えておられるんで、出稽古させていただきたいなぁ、とも思った。

そんなことを考えながらシャワーを浴び、Lausanneに戻る。
隣に座ったRPが「yasuの剣道、変わったね。昔と全然ちゃうよ。ちゃんと力ついとるよ。ポイントは嘘つかない。自信持っていい」って言ってくれた。
で、「でもね、何で1本とられたかまだ分からんのよ。面?」
「うん、引き面やと思う」
悔しそうだった。でもこれからの稽古をシュミレーションしているようで、「今度、一緒に稽古しよ。yasu攻略法研究するから。」
運転してくれたEGSを含め、何人もの人に中心をとる姿勢、守りを褒められた。
オリヴィエとの稽古の時に注意されているのだが、やっぱりちょっとは進歩してるんかな。

Lausanneに着いて、皆でバーのエクステリアで祝杯をあげる。
肴はMFKの2位、RBの組1位、KFのごぼう抜き、それと僕の紅白戦の3勝。
ビールが旨かった。いろいろ話したが、Bern Cupが皆にいい効果をもたらしているのが分かった。
ATは「男性剣士でも恐れなくなった自分を誇りに思う」って言ったたし、皆、各々のnext stageに上ったのは明らか。みんないい顔をしていた。剣道へのモチベーションも上がっているのが明らかだった。

紅白戦の時に、「捨て身の1本」、「無心」がほんのちょっと見えた気がした。
その場に身を置いて初めて分かること、頭ではなく身体で分かること、そんなモノの存在を身体と心で感じた。
リバ剣してよかった。剣道を続けてきてよかった。勝てたからではない。それは断言できる。
今まで知らなかった世界に一歩踏み出せた感じ、それを本当に感じたから。自分の人生で大きな変化をもたらす1日になった。
いいイベントだったなぁ。