RBLDOJO 1回目

昨日は更に別の稽古場に行った。これは昨年末に考えていたもののインフルエンザの影響で稽古が休みとなっていて行けなかったもの。17時スタートということだったが早目に行くことにした。初めて行く所だし、ソルドなどのために街中の道が渋滞していることが分かっていたから。でも16時半には着いてしまった。実は稽古場はなんとバレー・スクールのスタジオ。剣道がこのバレー・スクールの必須教科になっているのだ。待っている間に掲示板に貼られているスケジュールを見ていたが、週7日、一日も休みがなく朝9時から夜7時までずっと授業がある。剣道は週3回。1.5時間が1回と、2時間が2回。身体を動かす以外にも音楽などの科目もあり、合唱なども聞こえていた。学生さんが行き交うが、みんなバレーダンサーの綺麗な体型をしているし、身のこなしも非常に優雅。全く異文化の世界。
そうこうしているとオリヴィエが登場。ここは2年のダンススクールで、剣道はこの2年間の必須科目だそうだ。2年終了後は殆どの学生がオーディションを経ていろんなダンス・カンパニーに所属するとのこと。まだ稽古開始までに時間があったのでスタジオの見学に行った。モダンバレーのレッスンだった。とても美しい動き。彼らが本当に剣道をするのか信じられなかった。オリヴィエ曰く、「剣道を通して、気をずっと保つこと、自分の表出する表現力を高めることなどを学び取って欲しいと思っている」、と。でも怪我のリスクもあるので「きつく打つのは避けるように」と言われた。オリヴィエによると、本来はバレーの方が怪我のリスクは高いのだが、彼らは剣道に通じていないので剣道の時には身体のマネジメントが十分できず、怪我をする可能性が高くなる、ということだった。逆に彼らはすでに身体は十分にウォームアップできているので準備運動はないので、僕らは初めの左足の運びはあまり過度にならないようにするように指示された(アキレス腱の損傷の予防のため)。
実際準備運動もなく、初めから垂、胴をつけて足さばきの稽古を開始。確かに剣道人の足さばきとは違って上下運動が多いし、跳んでいるように見える。自分も気を抜くと左足が跳んでしまうので、矯正をしなければならない自分にとってもいい稽古。素振りなどの基本稽古の後、飛び込み連続面打ち(8−15本程度)を行う。稽古後にオリヴィエから指摘されたのはこの時の足さばき。やはり左足が跳んでいる、とのこと。足から注意が外れるとダメ。左踵はもっと下げること、左足をプレスしてから踏みこむのではなく、左足はそのままで右足をスッと出し、左足を引きつけるようにと言われた。右足を3段階で前に出していき、その後左足を引きつけ打突するという稽古をするのがよさそうだ。5分の休憩をはさんで面をつけての稽古を開始。切り返し、基本打ち込みの後、「刷り上げ」の稽古。右足と竹刀との連携のタイミング、右足の歩幅の問題がようやくきちん飲み込めた。さらに練習中に「相手が進んできているので、刷り上げから打突への移行はもっと早くせよ」と言われた。二段階ではなく、一挙動で早く打つこと。確かにそう。その際に重要なのがやはり左手。ポジション、スナップ、返しなど。これは課題。その後地稽古に移り、約10人と当たる。疲れたし、どの程度打てばいいのか分からずちょっと困惑したところもあった。女の子相手の時にはかなり気をつけたが、男相手の時にはちょっと遠慮を控えめにしたかも・・・。彼らは身体運動能力がやはり高いので、剣道の形を早く飲み込んでいるように思う。でも表現力にとって重要なことの一つである「気合い」を入れることなどはなかなか習得しにくいらしい。ジャン・マークに怒られたこともあるので、僕もきちんと「気合い」を持続させるような打突をしなければならない。
稽古中、彼らは質問をすることが多い。早口なので質問の内容は聞き取れないことも多かったが、その後のオリヴィエの対処でだいたい何を言っていたかは解った。ここではオリヴィエは普通の学校の先生といった感じ。剣道場とはちょっと違った。
終了後もオリヴィエが足さばきについて個人指導をしてくれた。10−15分くらい。傍らでもうモダンバレーの個人練習が開始されていたけど・・・。ロッカールームでオリヴィエとさらに話をした。日本、スイス人、文化のこととかいろいろ。彼は今のスイス人の若者の事を心配しているし、僕も今の日本人、日本文化の変化を憂うという状況。「僕らは他人を敬う事を知っているし、侮辱したり酷いことを言ったりすることは絶対にしないようにしている。でも若い人の多くは「自分が愛されている」経験がなく、自尊心が養われていない。それで他人を敬うことができなくなっている。今の社会状況の悪化がさらに追い打ちをかけている」、と。疲れと空腹のため自分の英語のレベルが落ちてきていて充分な返しができなかったが、状況は同じなんだと思った。あと海外(特にヨーロッパ)に3,4年いると日本に戻るのは結構辛いかも、と言われた。日本での価値観と合わなくなってくるから、というのがその理由。確かに今回の一時帰国の際に、ちょっとずれてきているかも、と思ったことが幾つかあった。日本社会に受け入れられるか、心配になってきているのも事実。
あとスイスの剣道人口は400名(スイス剣道連盟への登録者のみ)。一緒に始めた人がどんどん稽古に来なくなってきているのでその点を聞いてみると、10%が1年間続けられ、1%が10年続けられる、という状況らしい。
今回の出稽古(?)は非常にためになった。基本の稽古だが、今の僕にとってはとても大切なもの。オリヴィエが許せば、本道場とここの練習(土日)には参加したいと思う。