BLKC 17回目-2

稽古後に先生への個別挨拶があるが、下っ端でしかも照れがあるのでまだ行えない。みんながどんな質問をして、先生がどのようなことを返しているのか興味はあるんだが、何せフランス語。聞き耳を立てていても分からない。終了後のお互いの挨拶の時に、ちょっとした質問をお互いにする。
今回は防具の片づけをしている時に、オリヴィエを含めて雑談になった。その時ティムが僕のところに持ってきたのが一つの手拭い。「理を知り 機を智り 道を楽しむ」という文言が書いてあり、解釈を聞いてきたのだ(福本先生オリジナルのお言葉?)。彼のお父さん(ファム)は多分Chineseで漢字はわかると思うんだけど。でもこの解釈、説明はとても難しい。「理」、「機」、「道」それぞれに慣用的に使われる意味以外に仏教、その他の哲学的な意味もあるので、英語のみならず日本語でも簡潔に完全な説明することは絶対無理。この文言の意味の理解、体現は一生をかけて行っていくことだろうし。いろんな日本人の解釈を拝聴したいものだ。
その後、ミチさんに「払い」の再指導をしてもらっていたら、オリヴィエも加わって教えてくれた。中結の位置に注意すること(常に中心を保つ)、左手の位置に注意すること(左右だけでなく、前に進むようにもっていくこと)が重要な2つの点。本に書いてある「円を描くように」ということがようやく分かった。
あとはオリヴィエからの指導と雑談。「フランス語での指導はわかった?」と聞かれたので、「分からなかった」と正直に言ったが、今日の一番のポイントは「基本稽古時の素振り」にあったよう。この時のフランス語での説明を再度英語にしてくれたが、オリヴィエの説いていた概念はフランス語でも理解できていたと思う。

  • 筋力の問題

スイス人など身体や腕がゴツい人が多く、剣道でのパワーの必要性を考えることもあるが、オリヴィエはパワーは必須ではないと言う。彼が剣道を始めたのは24歳の時でパワーに頼らない武道ができる剣道に魅せられたらしい。でも彼は190cm以上あるし、僕よりも明らかにパワーはある。でも確かにエリックやグニエルモなどと比較すると骨格、筋肉の付き方も全然違う。
年齢を経るに従ってパワーは落ちていくが、techniqueは上達していき(練習をつづけていれば)、体力を無駄に消費せず、効率のいい剣道が上達していく。彼曰く「人生で獲得したいろんなものが剣道に活かされるようになるので、年配者には若い人ができない剣道が行える」とのこと。「人生で獲得したいろんなもの」には精神鍛錬などをいうが、仕事、家庭などでもこれが得られるという。

  • 稽古について

オリヴィエは、先生の言うことをそのまま全て素直に受け入れることは嫌らしい。Experimentという言葉を何度も使ったが、先生の言うことをそのままbelieveするのではなく、自分なりに色々試して自分に合ったものにすることが大切だという。オリヴィエ自身はいろいろ自分の中で試行錯誤して、最終的には「一番easyなものを選択」しているという。
彼が言わんとしていることはいわゆる「守破離」だろう。今の自分にとってはまだ「守」の段階。まずはオリヴィエの指導を守り、いろんな人の剣道を見て学ぶのが、自分にとっての現時点での課題だと思う。

オリヴィエの言葉は武道にまつわる専門用語(「残心」、「守破離」など)こそ出していないものの、それを充分に咀嚼して具現化して自分なりの言葉にしている。その時にはそれに気がつかないのだが、後でじっくり考えると武道の精神をきちんと説いていると思う。それに気づいた時、彼に対する尊敬がまた一層深まっている。この2ヶ月でもいろいろ教わった。感謝やなぁ。